福島への六十里

破間(あぶるま)ダム放流により水かさが増している大白川駅脇を流れる破間川。この上流で、この季節の風物詩の雪流れが見られます。

「六十里越」は、福島県南会津に通じる国道252号線の峠前後の通称です。会津と越後の境を越えられる道として長く使われています。

冬季期間はその雪深さから閉鎖になり、通常は5月の連休ごろに開通します。しかし今年は大規模な雪崩が発生し、橋長92メートルの「あいよし橋」が消失したため、開通が危ぶまれていました。

現場の状況を確認して工事ができるようにするため毎日除雪が続いていますが、橋に到達すると良いこと一つ、よくないこと一つがわかりました。

よいことは、あいよし橋の架設前に使用されていた旧道が、大きな損傷なく使えそうだということです。

よくないことは、その一つ先の「出逢橋」の橋脚が別の雪崩によって橋桁の鉄骨が大きく曲がる被害に遭っているということです。

重要な幹線である六十里越が通れないと、南会津との唯一の連絡手段が日に4本の只見線の気動車だけとなり、福島との関係が遠くなってしまいます。

一刻も早い安全な復旧開通を、心より願っています。

大白川から峠超えに臨む252号線。今年開通するのはいつになるでしょうか

(2022.4.14)

クルミでキノコを育てる

きのこの菌打ちが最盛期を迎えています

今年は4月になっても里まで雪で覆われています

雪の残る初春に、山からホダ木を切り出します。山奥からでも下草や枝葉に邪魔されずに比較的容易に里まで持ってこれるからです。

くるみの原木。雪の降る前、咋秋切り出しておいたもの

きのこの育成に向く木は種類によっていろいろですが、なめこにはクルミの木が向いているそうです。

真っ直ぐに打ち込むことが重要

ほぞを切り、菌打ち機になめこ菌を仕込み、ほぞに向かって打ち込みます。

なめこ入り菌
農協にて購入

運が良ければ今年、遅くとも来年には7・8割のほぞからきのこが生えてくるとのこと。

咋秋の林の中の栽培地の様子

この後、ホダ木は山の林の中に戻ます。秋まで、楽しみに待つ日々です。

村長の家の作業場、今日はここまで

(2022.4.6)

茶話会でお雛さまを作ります

魚沼田中の駅のある田中地区で、茶話会が実施されました。コロナ禍で長く休んでいましたが、地域の行事が再開できたことはうれしいことです。

指導役の和子先生が見て回ります

今月は和暦のひな祭りに向けて、折り紙で飾りびなを作ります。

四苦八苦しながらも、何とか形になりました

筆者も参加。色合わせがポイントだと感じました
仕上がったものをお互いに見て回ります
同じ目標に向かうと、年関係なく讃え合う気持ちになりますね

一時間の短い時間でしたが、ほっこりした気持ちをもらいました。

若手が減り、地域の行事がコロナを理由に次々消えていく中、貴重な体験となりました。

(2022.3.26)

ちまきが人気のヒロ子工房です

椛沢ヒロ子さんはものずき村の議員の中で最高齢の女性です。村長のいとこにあたります。まったく年齢を感じさせない腕前で、加工食品を自分の手で作り、「ヒロ子工房」の名を冠してものずき村で売っています。

リンゴチップスも定番の人気。夏ミカンのピールは新製品
ほどよい甘さにほろ苦さが加わり絶妙な美味の夏ミカンのピール

地域のことにも関心が高く、以前紹介した道円禅師の道円塚の物語をみずから紙芝居にしています。絵心もある、ものずき村の重鎮です。

昔話の味わい深いタッチ

(2022.3.10)

晩冬の雪の中の除雪

冬のさなかは雪が降るとどんどん積もっていきます。
春が近づくと積もった雪が溶け、降った雪は長く残らずに根雪が徐々に減っていきます。

例年は2月半ばを境にして、増加傾向から減少傾向に転じますが、今年は断続的な大雪が毎週のように訪れ、3月1日の開店を前にして大掛かりな除雪が必要となりました。

駐車スペースの雪をショベルカーでどけていきます。
がけ際に何メートルも積もった雪を自分で掘って、除雪した雪を処分する穴をつくります。
そば処のテント裏は村長が手ずから除雪

ブルとユンボが大活躍ですが、細かなところは手作業です

只見線の方に転げ落ちた雪を回収しに行く

ものずき村は只見線が見下ろせる位置にあるため、除雪作業中の雪が只見線に落ちていってしまわないように気をつけます。

たまたま只見線をロータリー車が通りかかって雪を吹き飛ばしてくれました。

運転士さんと挨拶を交わして見送ります

大方除雪もできました。3月1日から3日間はそば半額セールでお客様をお待ちしています。

(2022.2.25)

魚沼盆地を高原から望む

晩秋の魚沼盆地。正面に見えるのは越後三山

越後山脈と魚沼丘陵に挟まれた魚沼盆地の北の端に、小出や広神の地域は位置します。そこを眺望するのに絶好の場所が道光高原です。

夏の高原

夏は高原全体が緑に覆われ、盆地も若い穂で一面緑です。

頂上近くの畑の初夏

秋、高原に上がると、たくさんの種類のコケを目にすることができます。

コケ好きにはたまらない様々な種類のコケが自生する

水はけの良い土地で、たくさんの作物が元気よく育ちます。

寒さも風情

木の影が伸びて肌寒さも心地よい

上ってきた道は完璧に除雪済み。右奥に見える上り道は除雪しない
除雪することで生活が成り立っていることを認識できる除雪・非除雪境界です。

春が来るまで高原には上れません。除雪がなければ里の暮らしもどれほど大変かを想像することができる場所です。

(2021.1.19)

金ヶ沢の塞の神

昨年飾っただるまや神棚のしめ縄、年初の正月飾りなどを焼くどんど焼き(左義長:さぎちょうとも)は、新潟・会津では塞ノ神(さいのかみ)と呼ばれることが普通です。

ものずき村にほど近い金ヶ沢集落では、1月9日に行われました。(相対的に)若い四・五十代の若玉会が中心となり、柱を組み、カヤ、ワラなどを縛っていきます。

地方の集落はもともと高齢化が進んでいたため継続することが難しくなっていましたが、コロナ禍で集会が遠慮されるようになり、中止する流れが決定的になりました。

枯れたマメの枝は内部に、カヤは外側で縛る

魚沼市の集落でも取りやめた、という話を多く聞きます。金ヶ沢でも、餅つき会などは中止して再開の見込みはないとのことですが、塞の神だけは今年も行われることになりました。

櫓の対面には雪で祠と干支を作ります

今、どんど焼きが残るのは、都市部のイベントか、観光として位置付けている場所が多く、地元の人たちの神事として素朴な形で残っているのは珍しくなりました。

由緒正しき須門神社の神主様に祝詞をあげてもらいます
周囲をめぐり四方で祈る

炎によって歳神様を天に送るという儀式には、一緒に心が清められるような気を感じます。集落の皆さんと静かに炎を見つめて、安寧と平安を祈り、神事の永続を願う気持ちになりました。

歳神様!

(2022.1.10)

雪国の雪のこと

自然落下の屋根でも、暖房をしばらくつけないでいると雪の積もる量が多い

冬は積雪していることが普通の状態である魚沼では、雪が降るたび除雪車が主な道路を走り回り、すぐに車が通るのに問題ないレベルになります。主な道路とは、人家の面している道のほぼ全てであり、除雪しないのは田んぼや畑の間の道くらいです。

豪雪の後も夜明けとともに除雪車が除雪
窓から只見線と田畑を望む。

それでも、除雪車が入り込めない歩道のキワや、家の路地は自らの手で除雪が必要です。雪が降ると、各家々の前の人が通るところは、その家の住人によってたちどころに除雪されます。それは、雪国で暮らす人にとって暗黙のルーチンであり、てらうこともなく、気負うこともなく、淡々と当然のこととしてなされます。

時間外れに屋根から落ちた雪が道路を覆う。人と車の安全が確保できる程度まで手作業

雪国の外の人間から見ると、それは荷の重い義務である一方で、暮らしの場を守る無償の行為が自然な形で協働されている、少し羨ましい姿です。

都会に住んでいると、暮らしを支える全ての行為は行政サービスに転じて、税金をそのための費用として払っているのだから当たり前、という感覚になります。しかし元を質せば、こういった協働作業が本来の姿だったはずです。そこにある奉仕の精神やお互いを思う心が行政サービスとして金銭に変わっていくに連れて、人の結び付きも希薄になっていったのだと思われます。まちや集落の姿について考える雪かきです。

休業中のものずき村もブルで除雪

(2021.12.30)

マルチなモノズキ 吉野屋さん

スーパーのあった位置と後ろにそびえる守門岳(12月10日撮影)

ものずき村のCOOとも言える佐藤良孝(以降、屋号の吉野屋)さんは、魚沼田中駅にほど近い国道252号線沿いの吉野家スーパーを経営していました。大手スーパーの小出への進出により、8年前にスーパーは廃業しましたが、隆盛時は破間川流域で随一の、億を超える売上規模を誇りました。

81才の佐藤良孝さん、通称吉野屋さん

その経営当時から店主の吉野屋さんは近くの山で狩猟をする、野菜を育てる、新たな保存食開発にチャレンジする、といったことを楽しんでいました。今でもその興味は尽きず、山菜が残れば新味の漬物に、コメが取れれば麹にして食品を、と愛読書の「現代農業」を片手に、新たな食の開発に日々過ごしています。

吉野屋さんのバイブル 現代農業は全冊持っているそうです。

人生にとって重要なのは好奇心を持ち続けることだと、今年ノーベル賞を受賞された真鍋さんも語っておられましたが、この方ほど好奇心が多方面にわたる人も珍しいと感じます。しかし、よくよく目を凝らすと、その好奇心の目指す先はいつも食に関することでした。

麹作りは夫唱婦随で。冬に仕込みが本格化

ものずき村の野菜直売所に併設するそば処「げんたん」は、吉野屋さんが試行錯誤を繰り返し気候に応じたそば粉の配合を決めてきました。毎日11時から13時までの営業でありながら、行列ができる評判のその蕎麦は、吉野屋さんの食に対する飽くなき探究心が元になって生まれた、とも言えます。是非一度、ご賞味ください(12月から2月の冬季期間は休業中)

(2021.12.20)